本格的な秋の到来

 先月23日、山梨県の甲府地方気象台は富士山の初冠雪を発表した。昨年2024年は統計開始以来最も遅い11月7日に初冠雪が発表されたため、昨年よりは15日早い観測であったが、平年値は10月2日なので平年より21日遅い初冠雪であった。富士山における初冠雪とは、その年の「最高気温日」を観測して以降に、「山の全部または一部が、雪または白色に見える固形降水(雹など)で覆われている状態を下から初めて望観できたとき」を指し、富士山の初冠雪を観測発表するのは甲府地方気象台の担当とされている。

同日青森地方気象台からは岩木山の初冠雪発表があり、こちらは平年より2日遅く、昨年より2日遅い観測だという。また、北海道の大雪山系から紅葉の便りが届くと、全国各地からも秋の知らせが届き始め、いよいよ本格的な秋の到来を印象付ける候となったようである。気温も大きく変化し、10月下旬ごろからは東京でも上着なしでは出歩けないまでに低くなった。待ち望んだ本格的な秋の到来だが、そもそも秋が始まるのは一体いつなのか?改めて考えてみたい。

秋の始まりを分類すると、8月7日ごろの「立秋」が暦の上での秋であり、時候の挨拶で「暑中見舞い」から「残暑見舞い」に切り替わるのはこれが境目である。ちなみに残暑(見舞い)が続くのは「二十四節気*」の一つ「白露」(2025年は9月7日)までとなっている。白露とは、聞く機会があまり多くは無いようだが、朝晩の冷え込みによって草花に露が宿り、白く輝いて見える頃を意味し、二十四節気の「処暑」と「秋分」の間にあたる。昼間はまだ夏の名残がある一方、夜明けや夕暮れには秋の涼やかさが漂う時季で、昼夜の気温差が大きくなり、露がよく見られるようになるとされている。

*注;二十四節気とは

立春、春分、夏至など、季節を表す言葉として用いられている日本の暦。1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにそれぞれを6つに分け、「節または節気(例えば春の啓蟄など)」と「気(中または中気とも呼ばれる)」が交互にある。

天文学的には、昼と夜の長さが同じになるのが秋分の日であり、今年は9月23日が「節入り日」で10月7日までの15日間が「秋分」とされている。気象学的には、9月1日から11月30日までを秋としているが、体感的には実際の季節とはその年によって異なる。今年もそうであったが猛暑が長引くことから秋本番は10月中旬以降になることが多い。

振り返ってみると今年の夏は、例年以上に暑い日が続いたように思える。気象庁の統計によると、今夏(6~8月)の日本の平均気温は、平年を2.36度上回り、1898年の統計開始以来「最も暑い夏」になった。過去2年間(2023、24年)は平年プラス1.76度でそれまでの夏の最高値だったが、この数値をさらに0.6度更新、3年連続で最も暑い夏となり、気温上昇に歯止めがかからない状態が続いている。

パナソニックは、自社の家庭用エアコンの平均利用時間が、今夏過去最長を記録したことを発表。全47都道府県で1日平均11時間以上利用され、気温が平年比でより高かった北日本ほど利用時間が増加した。外出先からエアコン操作などができる「アプリ」利用者のうち、約9万人のデータを集計したもので、6~8月の冷房利用の全国平均は1日13.63時間、2022年の計測開始以降で最長となった。地域別で最長は沖縄県の15.64時間、平年比で最も延びたのは北海道で1.52時間だったという。

気象庁の観測データによると、北日本では平均気温が平年比 +3.4℃、東日本では +2.3℃、西日本では +1.7℃と、多くの地点で過去最高値を更新、特に群馬県伊勢崎市では国内最高気温41.8℃を記録した。このように記録的な暑さが続く中で、梅雨明けは例年より早く、6〜7月には一部地域でダム貯水量が減少する局面もあったが、その一方で、線状降水帯や局地的集中豪雨の影響により、全国で浸水や土砂災害が発生。8月上旬の降水量は、熊本県で690.5mm(平年比約3.6倍)、福岡県で630.0mm(平年比約3.6倍)、また新潟県では587.0mm(平年比約4.1倍)を記録するなど、短時間で局地的に降る大雨の頻度や雨量は増加する傾向が顕著であり、災害対策の重要性を浮き彫りにした。

豪雨リスクは企業にとっても重要課題である。特に線状降水帯や内水氾濫による浸水リスクを踏まえ、平素から対策を講じておくことが重要である。このためには、まず、ハザードマップや土砂災害警戒区域を確認し、地下設備や1階の重要な設備は高所へ移設するとともに、止水板を設置しておくなど、特に、浸水想定区域内にある事業所は事前の準備が必要となろう。BCP(事業継続計画)では、大雨警報や線状降水帯予測情報をもとに初動対応を決定するとともに、出社制限やリモートワーク切り替えなど従業員の安全最優先ルールを明確化しておく他、物流(サプライチェーン)について、あらかじめ複数ルートの確保や在庫分散、或いは取引先との優先輸送協定の締結などの対応を準備することも必要である。

豪雨災害への対応で特に重要なのが情報収集である。気象庁・自治体の公式情報をリアルタイムで監視するとともに、川の水位やダム貯水量など地域の水害リスク情報を確認するなど情報を収集する体制を整え、かつ入手した情報を社内で共有できるようルール化(連絡網やチャットなど)することが重要である。さらに重要なのが、情報収集に基づく社内対応フローを周知するための、災害対応の訓練・教育である。このため、豪雨対応チェックリストに基づく社内の体制整備と確認をはじめに、従業員の研修や地域防災訓練への参加、豪雨を想定したシナリオに基づく訓練を実施することが有効である。

例えば、豪雨対応チェックリストとして

〇 ハザードマップ確認  〇 設備防水・高所移設、〇 BCP発令基準設定、〇 代替物流ルート確認、〇 情報収集・共有体制、〇 訓練実施など

項目をリストアップし、それぞれについて【未対応/対応済】を確認する。

また、豪雨想定シナリオ訓練では、豪雨発生時の社内対応について

  1. 気象情報・河川水位・ダム貯水量などの情報を収集
  2. 防災担当がBCP発令など初動判断を行う
  3. 従業員の安全確保や設備保護の行動を実施
  4. 社内で情報を共有し、対応状況を記録するなど

災害対応のフローを文章化し、その手順を繰り返し訓練する。

このような訓練を年に2回ほど行うことで、災害対応の練度の向上を図るとともに、BCPの周知徹底や継続的な見直し・修正をする絶好の機会となる。先日町内のある会合で、警察OBの方と歓談する機会があったが、その時「訓練は実戦のごとく」「実戦は訓練のごとく」という格言を紹介いただいたが、まさに緊張の極致のなかで活動する現場では、訓練の場数がものをいうことを端的に示す名言であると、あらためて痛感した次第である。

 当協会では、皆様のお役に立てるよう、防災訓練士の養成やBCPの作成などをはじめ、防災に関するオンラインセミナーや、事業所の特性に応ずる訓練シナリオの提供など、様々なプログラムを用意してお待ちしています。いつでもお気軽にお尋ねください。

2025年11月10日
一般社団法人 防災訓練士協会
代表理事 安村勇徳